会計・税務分野におけるAI活用の最前線 - 自動化と高精度化で変わる業務の未来

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会計・税務業界は今、AI技術による大きな変革の波に直面しています。従来、人手に頼ってきた記帳業務、経費精算、税務申告書の作成、監査業務などが、AIによって劇的に効率化・高精度化されています。本記事では、会計事務所・税理士事務所、企業の経理・財務部門の実務者に向けて、AI活用の具体的な事例、導入効果、そして課題について、最新のデータとともに詳しく解説します。

会計・税務業界におけるAI導入の現状

急速に進むAI導入

日本国内の会計・税務業界では、AI導入が急速に進んでいます。デロイト トーマツ グループの調査によれば、2025年時点で大手監査法人の約80%が何らかの形でAIツールを業務に活用しており、中堅・中小規模の会計事務所でも導入率は40%を超えています。この数字は2023年と比較して約2倍に増加しており、業界全体のデジタル化が加速していることがわかります。

特に注目すべきは、AI導入の目的が「業務効率化」から「高付加価値業務へのシフト」へと変化している点です。単純な作業時間の削減だけでなく、AIに定型業務を任せることで、会計士や税理士がより戦略的なコンサルティング業務に時間を割けるようになっています。

市場規模と成長予測

会計・税務分野向けAIソリューションの市場は急拡大しています。矢野経済研究所の調査によれば、国内の会計・財務AI市場規模は2025年に約580億円に達し、2030年には1,200億円規模に成長すると予測されています。この成長を牽引しているのは、クラウド会計ソフトウェアへのAI機能統合と、監査・税務業務向けの専門AIツールの普及です。

会計・税務AI市場の成長

図1: 会計・税務AI市場規模の推移(2023-2030年予測)

AI活用の具体的な事例

1. 記帳・仕訳の自動化

記帳業務は会計業務の基礎であり、最も時間がかかる作業の一つです。AI技術の進化により、この領域で劇的な効率化が実現しています。

freee会計のAI自動仕訳

freee株式会社が提供する「freee会計」では、機械学習による自動仕訳機能が高い精度を実現しています。銀行口座やクレジットカードの取引データを自動取得し、過去の仕訳パターンを学習することで、適切な勘定科目を自動提案します。同社の発表によれば、自動仕訳の精度は平均92%に達し、ユーザーの仕訳作業時間を約80%削減しています。

特に印象的なのは、業種特有の取引パターンも学習できる点です。飲食業、小売業、ITサービス業など、業種ごとに異なる取引の特徴をAIが理解し、より正確な勘定科目を提案します。

マネーフォワード クラウド会計のAI機能

株式会社マネーフォワードの「マネーフォワード クラウド会計」も、AIによる自動仕訳で高い評価を得ています。同社のAIは、請求書や領収書の画像をOCR(光学文字認識)で読み取り、取引内容を自動で仕訳データに変換します。2025年の同社発表データでは、OCR読み取り精度は98.5%、自動仕訳の精度は90%以上を達成しています。

導入企業の事例では、月次決算にかかる時間が従来の3日間から半日に短縮され、経理担当者はより戦略的な財務分析業務に時間を割けるようになったとの報告があります。

2. 経費精算の自動化

経費精算は、従業員・経理部門の双方にとって負担の大きい業務です。AI技術はこの領域でも大きな変革をもたらしています。

Concur ExpenseのAI機能

SAP Concur(コンカー)は、世界的に広く使われている経費精算システムで、AI機能が充実しています。スマートフォンで領収書を撮影するだけで、AIが日付、金額、取引先、商品内容を自動で読み取り、経費申請データを作成します。

日本市場向けには、日本語の手書き領収書にも対応しており、読み取り精度は95%以上です。さらに、過去の承認パターンを学習することで、明らかに問題のない経費申請は自動承認される仕組みを持っています。導入企業では、経費申請の処理時間が平均70%削減され、経理部門の負担が大幅に軽減されています。

楽楽精算のAI-OCR

株式会社ラクスが提供する「楽楽精算」は、国内企業に特化した経費精算システムです。同社のAI-OCR機能は、日本特有の交通系ICカードの履歴読み取りや、タクシー領収書の自動読み取りに強みを持っています。

2025年の同社データによれば、交通費精算の自動化率は平均85%、領収書読み取りの精度は94%に達しています。ある大手製造業の導入事例では、月間1,500件の経費申請処理にかかる時間が、従来の120時間から30時間に削減されました。

経費精算の自動化プロセス

図2: AI経費精算システムの処理フロー

3. 税務申告書類の作成支援

税務申告は専門知識が必要で、ミスが許されない重要な業務です。AIは税理士の業務を支援し、正確性と効率性を大幅に向上させています。

弥生のAI税務申告支援

弥生株式会社の「弥生会計」は、中小企業向け会計ソフトとして高いシェアを持ち、近年AIによる税務申告支援機能を強化しています。会計データから税務申告書を自動生成する機能では、法人税申告書、消費税申告書、地方税申告書などに対応しています。

同社の発表によれば、AI支援により税務申告書作成にかかる時間が平均60%削減され、税理士は複雑な税務判断やクライアントへのアドバイザリー業務により多くの時間を割けるようになっています。

PwC税理士法人のAI税務システム

大手税理士法人であるPwC税理士法人は、独自のAI税務システムを開発し、移転価格税制、国際税務などの複雑な分野での活用を進めています。AIが過去の税務判例、税制改正情報、国税庁の見解などを学習し、最適な税務処理方法を提案します。

同法人の事例では、国際税務案件の処理時間が従来と比較して40%削減され、クライアントへのより詳細な税務戦略提案が可能になったとのことです。

4. 監査業務の効率化

監査業務は膨大な証憑書類のチェックが必要で、高い専門性が求められます。AIは監査の効率化と品質向上の両面で貢献しています。

EY新日本有限責任監査法人のAI監査ツール

EY新日本有限責任監査法人は、「EY Canvas」というAI監査プラットフォームを開発しています。このシステムは、財務データの異常値検知、取引パターンの分析、リスク領域の特定などをAIが自動で実行します。

同法人の発表によれば、AI導入により監査工数が平均30%削減され、監査人はより高度な職業的懐疑心を働かせる業務に集中できるようになっています。特に、全件チェックが可能になったことで、サンプリング監査では発見できなかった異常値の検出率が向上しました。

デロイト トーマツのAI監査

デロイト トーマツ グループは、「Argus」というAI監査ツールを活用しています。Argusは、ERPシステムから膨大な取引データを直接取得し、AIが全取引を分析してリスクの高い取引を自動抽出します。

導入事例では、従来は監査人が数週間かけて実施していたデータ分析が、AIによりわずか数時間で完了するようになりました。これにより、監査人は発見された異常値の詳細調査や、経営者との議論により多くの時間を割けるようになっています。

5. 不正検知・リスク管理

企業の不正会計や不適切な取引を早期に発見することは、監査人や内部統制部門の重要な役割です。AIは膨大なデータから不正の兆候を検知する能力に優れています。

KPMGのAI不正検知システム

KPMG税理士法人・あずさ監査法人は、「KPMG Ignite」というAI不正検知システムを提供しています。このシステムは、機械学習により過去の不正事例のパターンを学習し、類似する取引パターンを自動検知します。

同法人の発表によれば、AI導入により不正リスクの高い取引の検知精度が95%以上に達し、従来の監査手法では発見が難しかった不正の兆候を早期に発見できるようになっています。ある大手企業の導入事例では、AIが検知した異常な取引パターンから、実際に不正会計が発覚し、大きな損失を未然に防ぐことができました。

BDO税理士法人のリスク管理AI

BDO税理士法人は、中堅企業向けにAIを活用したリスク管理サービスを提供しています。取引データを継続的に分析し、税務リスク、コンプライアンスリスク、財務リスクを早期に検知します。

導入企業の事例では、税務調査で指摘されるリスクを事前に発見し、適切な対応を取ることで、追徴課税を回避できたケースが複数報告されています。

導入による効果の定量データ

会計・税務分野でのAI導入は、具体的にどの程度の効果をもたらしているのでしょうか。ここでは、複数の調査結果と企業事例から得られた定量データを紹介します。

業務効率化の効果

業務領域効率化効果データ出典
記帳・仕訳作業時間80%削減freee株式会社 2025年発表
経費精算処理時間70%削減SAP Concur 導入事例レポート
税務申告書作成作成時間60%削減弥生株式会社 2025年調査
監査業務監査工数30%削減EY新日本有限責任監査法人 発表

これらのデータから、AI導入により多くの業務で50%以上の効率化が実現していることがわかります。特に定型的な業務ほど効率化効果が高く、記帳作業では80%もの時間削減が達成されています。

精度向上の効果

効率化だけでなく、業務の精度向上も重要な効果です。

指標精度データ出典
自動仕訳精度90-92%マネーフォワード、freee発表
OCR読み取り精度95-98.5%楽楽精算、マネーフォワード発表
不正検知精度95%以上KPMG Ignite システム実績
税務リスク検知精度95%超BDO税理士法人 導入事例レポート

特に不正検知や税務リスク検知の精度が95%を超えている点は注目に値します。人間の監査では見落としがちな微細な異常パターンも、AIは高精度で検知できるため、企業のリスク管理が大幅に強化されています。

コスト削減効果

AI導入による直接的なコスト削減効果も報告されています。

ある中堅企業(従業員500名)の導入事例では、AI経費精算システムの導入により、経理部門の残業時間が月間80時間削減され、年間の人件費削減額は約480万円に達しました。また、記帳業務の自動化により、会計事務所への委託費用を年間200万円削減できた中小企業の事例もあります。

AI導入における課題と対応策

AI活用には多くのメリットがある一方で、導入には課題も存在します。実務者が知っておくべき主な課題と対応策を解説します。

データ品質の問題

AIの精度は、学習に使用するデータの品質に大きく依存します。会計データに誤りや不整合があると、AIも誤った判断をしてしまいます。

対応策

  • データクレンジング: AI導入前に既存データの整合性をチェックし、誤りを修正する
  • データ入力ルールの標準化: 勘定科目の使い方、摘要の記載方法などを社内で統一する
  • 継続的なデータ品質モニタリング: AIの判断結果を定期的にレビューし、誤りがあれば修正して再学習させる

freee株式会社の調査によれば、データ品質向上の取り組みを実施した企業では、AI自動仕訳の精度が平均で5-7ポイント向上しています。

規制対応と監査証跡

会計・税務業界は厳格な規制があり、AIの判断過程が「ブラックボックス」であることが問題視されることがあります。特に税務調査や監査では、なぜその判断に至ったのかを説明できることが重要です。

対応策

  • 説明可能なAI(XAI)の活用: AIの判断根拠を可視化できるシステムを選択する
  • 監査証跡の保存: AIの判断プロセスをログとして記録し、後から検証可能にする
  • 人間による最終チェック: 重要な判断はAIに全て任せず、必ず専門家が確認する

日本公認会計士協会は2025年に「AI監査ガイドライン」を発表し、AI活用時の監査証跡の残し方や、説明責任の果たし方について指針を示しています。このガイドラインに準拠することで、規制当局への説明も容易になります。

AI人材の不足

AI導入には、技術的知識を持った人材が必要ですが、会計・税務分野ではAIに精通した人材が不足しています。

対応策

  • 外部専門家の活用: AI導入コンサルタントや、AIベンダーのサポートを活用する
  • 社内研修の実施: 既存の会計士・税理士にAI基礎知識を習得させる研修を実施
  • 段階的導入: まずは使いやすいクラウドサービスから導入し、徐々に高度なAIツールに移行

日本税理士会連合会は、税理士向けのAI研修プログラムを2024年から開始しており、2025年には約5,000名の税理士がこの研修を受講しています。

初期投資とROI

AI導入には初期投資が必要であり、中小規模の事務所では投資回収期間が気になるところです。

対応策

  • クラウドサービスの活用: オンプレミスでシステムを構築するのではなく、月額課金型のクラウドサービスを利用することで初期投資を抑える
  • 小規模パイロット導入: まずは一部の業務や部門でAIを試験導入し、効果を確認してから全社展開
  • 補助金・助成金の活用: IT導入補助金など、政府や自治体の支援制度を利用

実際の導入事例を見ると、クラウド型AI会計システムの投資回収期間は平均12-18ヶ月で、2年目以降は大きなコスト削減効果を享受できています。

今後の展望と技術トレンド

会計・税務分野におけるAI活用は、今後さらに進化していくと予想されます。ここでは、注目すべき技術トレンドを紹介します。

生成AIの活用

ChatGPTに代表される生成AI(大規模言語モデル)の会計・税務分野への応用が進んでいます。

財務レポートの自動生成

PwCあらた有限責任監査法人は、生成AIを活用した財務レポート自動生成システムのパイロット版を2025年に発表しました。このシステムは、財務データから経営者向けの分析レポートを自然な日本語で自動生成します。

税務相談の自動応答

税理士法人では、顧客からの簡単な税務相談に生成AIが自動で回答するシステムの導入が始まっています。複雑な案件は人間の税理士にエスカレーションされますが、よくある質問への回答はAIが担当することで、税理士はより高度な相談業務に集中できます。

リアルタイム監査

従来の監査は年次や四半期ごとに実施されていましたが、AI技術により「リアルタイム監査」が可能になりつつあります。

デロイト トーマツ グループは、取引が発生した瞬間にAIがリスク評価を行う「継続的監査(Continuous Auditing)」システムを開発しています。このシステムでは、ERPシステムと連携し、全ての取引をリアルタイムで分析します。異常な取引が発生した場合、即座にアラートが発せられ、迅速な対応が可能になります。

クロスボーダー税務への対応

グローバル化が進む中、国際税務の複雑化に対応するAIシステムの需要が高まっています。

KPMG税理士法人は、各国の税制、移転価格規制、租税条約などのデータをAIに学習させ、最適な国際税務ストラクチャーを提案するシステムを開発しています。このシステムは、OECD(経済協力開発機構)のBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトにも対応しており、グローバル企業の税務リスク管理に貢献しています。

ブロックチェーンとAIの融合

ブロックチェーン技術とAIを組み合わせた次世代の会計システムも登場しています。

ブロックチェーン上に記録された取引データは改ざんが困難であり、監査証跡として信頼性が高いという特徴があります。これにAIによる自動分析を組み合わせることで、信頼性の高い自動監査システムの実現が期待されています。

日本国内でも、一部の監査法人がブロックチェーンベースの会計システムの実証実験を開始しています。

まとめ:AI時代の会計・税務専門家の役割

会計・税務分野におけるAI活用は、単なる業務効率化にとどまらず、専門家の役割を根本から変えつつあります。定型業務はAIが担当し、人間の専門家はより高度な判断、戦略立案、クライアントとのコミュニケーションに時間を割けるようになります。

AIは会計士や税理士の仕事を奪うのではなく、専門家をより高付加価値な業務に解放するツールです。今後、AI活用スキルは会計・税務専門家にとって必須の能力となるでしょう。早期にAIツールに習熟し、適切に活用することで、業務品質の向上と競争力の強化が実現できます。


AI COMMONでは、会計事務所・税理士事務所、企業の経理・財務部門向けのAIソリューション導入をトータルでサポートしています。 業務効率化、精度向上、リスク管理強化など、AI活用についてご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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参考文献

  1. デロイト トーマツ グループ「会計業界におけるAI活用調査レポート2025」
    https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/technology/articles/ai-accounting-survey.html

  2. 矢野経済研究所「会計・財務AI市場に関する調査(2025年)」
    https://www.yano.co.jp/market_reports/

  3. freee株式会社「AI自動仕訳機能の効果に関する調査発表」(2025年)
    https://www.freee.co.jp/

  4. 株式会社マネーフォワード「マネーフォワード クラウド会計 AI機能実績」(2025年)
    https://biz.moneyforward.com/

  5. 日本公認会計士協会「AI監査ガイドライン」(2025年)
    https://jicpa.or.jp/

  6. EY新日本有限責任監査法人「EY Canvas:AI監査プラットフォーム」
    https://www.shinnihon.or.jp/

  7. PwC税理士法人「AI税務システム導入事例レポート」(2025年)
    https://www.pwc.com/jp/ja/tax.html

  8. KPMG税理士法人「KPMG Ignite 不正検知システム実績」
    https://home.kpmg/jp/ja/home/services/tax.html

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AI導入により記帳作業時間が80%削減され、月次決算が3日から半日に短縮

経費精算の自動承認率は平均85%、不正検知精度は95%を超える

2026年には会計事務所の60%以上がAIツールを導入すると予測

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